SiCインバータ採用で航続距離が573km→620kmへ伸びた理由を徹底解説
あつしです
BMW i5 Touringは、2024年11月の日本導入からわずか数カ月で、航続距離が573km → 620kmへと大幅に改善されました。
バッテリー容量は同じ。モーター出力も同じ。
それなのに、なぜここまで伸びたのか。
その答えが 「SiCパワーエレクトロニクス(SiCインバータ)」の採用です。
この記事では、
- i5のどこが進化したのか
- SiCとは何か
- 通常インバータとの違い
- i5にどんな効果が出たのか
- 中古で買うならどの登録日を狙うべきか
を、技術的背景と実データをもとにわかりやすくまとめます。
i5 Touring の進化:573km → 620kmの衝撃
まず事実から整理します。
■2024年11月生産(初期ロット)
- WLTC航続距離:573km
- 電費:168〜175 Wh/km
- インバータ:従来Si(シリコン)
■2025年3月生産以降(中期ロット)
- WLTC航続距離:620km
- 電費:168 Wh/km
- インバータ:SiC(シリコンカーバイド)採用
- ホイールベアリング最適化
- 空力ホイール追加
■改善幅は +47km(約8%改善)
バッテリー容量は 81.2kWh(使用可能70.2kWh)で完全に同じ。
つまり、効率改善だけで航続距離が伸びたということです。
電費を改善させた「SiC」とは何か?
SiC(シリコンカーバイド)は、次世代パワー半導体として世界中のEVメーカーが採用を進めている素材です。
■SiCの特徴
- スイッチング損失が少ない(=発熱が少ない)
- 高耐圧・高温に強い
- 高速スイッチングが可能
- 電力変換効率が高い
EVでは、バッテリーの直流電力をモーター用の交流に変換する「インバータ」が心臓部。
ここにSiCを使うことで、電力ロスが劇的に減るのです。
通常インバータ(Si)とSiCインバータの違い

EVにとって「効率」はそのまま「航続距離」に直結します。
SiCは、同じバッテリー容量でも
より多くの電力をモーターに伝えられる=より遠くまで走れる
という革命的な技術なのです。
SiC搭載による i5 Touring の進化内容
BMW i5 Touring では、SiC採用により以下の改善が確認できます。
① 航続距離が 573km → 620km に改善
WLTCで+47kmは非常に大きい。
② 電費が改善(175Wh/km → 168Wh/km)
高速巡航や冬場の効率にも影響。
③ 発熱が減り、冷却効率も向上
バッテリー温度管理の負荷が減る。
④ 高速域での効率が特に向上
BMWの得意な「高速安定性」と相性が良い。
⑤ ホイールベアリング最適化・空力ホイール追加
SiCと合わせて効率改善を後押し。
i5を中古で探す場合の「登録日」の考え方
中古市場で最も重要なのは、
SiC搭載の2025年3月以降生産車を確実に選ぶことです。
■生産月 → 日本到着 → 登録までの流れ
一般的にBMWは:
- 生産
- 海上輸送(1〜2ヶ月)
- ディーラー到着
- 登録(試乗車 or 新車販売)
という流れになります。
■SiC搭載車が中古に出始める時期の目安

■結論:中古で狙うなら
- 2026年夏以降 → SiC搭載の試乗車が狙える
- 2027年夏以降 → SiC搭載の一般中古が豊富になる
まとめ:i5 Touringは「SiC採用」で別物に進化した
最後にポイントを整理します。
- 2024年11月生産のi5 Touringは WLTC 573km
- 2025年3月以降生産は WLTC 620km(+47km)
- バッテリー容量は同じ → 効率改善だけで伸びた
- 改善の主因は SiCパワーエレクトロニクスの採用
- 中古で買うなら 2025年3月以降登録車 を狙うべき
- 特に2026年夏以降の中古市場が狙い目
BMWは表に出さず静かに改良を入れるメーカーですが、
今回のSiC採用は「静かな大進化」と言える内容です。
i5 Touringを検討している人にとって、
生産月の違いは実用性にも価値にも直結する重要ポイントになります。
SiC理解に最適なURLのご案内
「SiCの基礎・市場・技術動向を知りたい」:SiCの総合解説
https://www.nepconjapan.jp/hub/ja-jp/blog/blog05.html
「国家プロジェクトレベルの技術資料を読みたい」:SiCの技術背景・性能指標
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/press/pawaere.pdf
「最新の研究成果を知りたい」:SiCの高速スイッチング実証
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250312/pr20250312.html

